様々なアレルギー疾患に免疫療法 ダニも保険適用
イギリスでは様々なアレルギー疾患に免疫療法
外国では、一般的に行われている治療や薬の処方が、日本では認可が下りなくて、治療出来ない例は数多くあります。
アレルギー疾患の治療についても同様の事が言えます。
イギリスでは、各種のアレルギー疾患に対して積極的に免疫療法が取り入れられています。
アレルギー疾患に対する免疫療法は、アレルギー症状の原因となっている物質(アレルゲン)を体内に少しずつ入れて、その物質を体に慣れさせる治療法です。
花粉に限らずハウスダストやダニなどのアレルゲンを液状にして不純物を取り除き、患者のアレルギー症状の様子を観察しながら最初は薄い濃度から、徐々に濃度を高めていき、医師の管理の下で治療を進めます。
日本でも食物アレルギーの治療に免疫療法が採用されつつある
最近では、日本でも幼児期に発症する食物アレルギーの治療に対して免疫療法が取り入れられています。
これまでの治療は、アレルギーを引き起こす食べ物は、食べない事を前提にして治療をしてきました。
免疫療法では、食物アレルギーを引き起こす食べ物を少しずつ食べて治す治療法です。
云わば、「毒には毒をもって制す」の治療法ですが、危険が伴いますので、必ず医師の管理下で行うことが絶対条件となります。
免疫療法は医師の管理下で進めなければ重篤な副作用も
食物アレルギーに対する免疫治療は、医師の管理下で進めなければ危険が伴います。
食べる分量を誤ると生命にかかわるアナフィラキシーショック等の重大な副作用を引き起こす可能性もあります。
治療は入院して医師の完全管理下で行われています。
副作用を発症した時にすぐに対応できる環境でなければなりません。
この治療はまだ健康保健の適用はされていませんが、スギ花粉症の舌下免疫療法が国の認可を受けたことで、今後各種の免疫療法の治療が一気に進む可能性があります。
ダニアレルギーの舌下免疫療法が保険適用
アレルギー疾患有病率が高まっている
2013年度版の日本全国のアレルギー性鼻炎の有病率調査によれば、1998年の花粉症有病率16.2%から2008年には26.5%に、通年性アレルギー性鼻炎は18.7%から23.4%に10年でかなり増えています。
通年性のアレルギー性鼻炎の年齢別の有病率では10代から20代に多く、中高齢者ほど少ない傾向が見られます。一方花粉症の有病率は、若者よりも中高齢者の方が多い傾向にあります。
通年性アレルギー性鼻炎と花粉症の両方を有病している人もいて1年中鼻炎でアレルギー症状に悩んでいる人もいます。
若い人にアレルギー疾患が多い原因として「衛生仮説」が唱えられています。「衛生仮説」とは余りにも衛生的な環境を求め過ぎて、日々の生活の中で過度に消毒殺菌が行われ、細菌と触れ合う機会が減少したため、アレルギーを抑えるIgA抗体(免疫グロブリンA)が体内に作られずアレルギー症状を起こすとする考え方です。
アレルギー疾患が増える原因「衛生仮説」とは
「衛生仮説」を裏付ける研究結果が多く報告されています。
例えば、「小さい頃に家畜などの動物と触れ合う生活をした子どもは大人になってもアレルギーが少ない」、「食洗機がある家庭の子どもよりも、食器を手洗いしている家庭の子どもはアレルギーが少ない」、「3歳までにピーナッツを食べると大人になってもピーナッツアレルギーを起こす確率が減少する」など、1つのアレルゲンに対して1つのIgA抗体がつくられます。
幼い時に将来アレルゲンになるものと触れ合うことで個々のアレルゲンに対応したIgA抗体が作られるのです。
通年性アレルギー性鼻炎は、ダニや家の中のちりが原因
通年性アレルギー性鼻炎の主な原因は、家の中のカビやフケ、蛾の死骸などのハウスダストやダニなどです。これらのアレルギーの原因になる物質を「アレルゲン(抗原)」と呼んでいます。
しかし、ハウスダストと言っても99%はダニが原因になっています。
ダニでは、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニと呼ばれる種類がアレルゲンとなります。この2種類のダニがダニアレルギーを2分しています。
肉眼では確認しにくく、じゅうたんや布団などの中に最も多く生息しています。
ダニアレルギーを起こす原因にるのは、ダニの死骸や糞便が原因になります。
春先に限定している季節性のスギ花粉症とは異なり、通年性アレルギー性鼻炎はアレルギーを引き起こす抗原があるため1年中症状が起こります。
アレルゲンが侵入し免疫反応が起こるとアレルギーを起こす
体の免疫システムとは、自己以外の異物を有害物と判断して攻撃を仕掛けて排除しようと働きです。
通年性のアレルギー性鼻炎は、花粉症の反応と同様に本来は害のないハウスダストに対して反応して免疫システムは抗体を作ります。
次に粘膜にある肥満細胞(マスト細胞)と結合することで、「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」などの化学物質が放出されると神経や血管が刺激されて、くしゃみや鼻みず、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎を引き起こします。
通年性アレルギー性鼻炎の症状
「鼻のアレルギー症状」として、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、鼻のかゆみ。
「眼のアレルギー症状」として、目のかゆみ、充血。(眼は小児ではよくみられる症状)
その他アレルギー症状として、皮膚のかゆみ、のどのかゆみなどがあります。
また、せき喘息や喘息の悪化などを併発する場合もあります。
特に、ダニアレルゲンによるアレルギー性鼻炎では、発作性・反復性の鼻のかゆみ、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが、朝起きた時や気温の変化などにより起こることが多いといわれています。
アレルギー性鼻炎の診断には、さまざまな検査が必要です。
ダニを原因とするアレルギー性鼻炎の検査診断
アレルギー症状のチェックと皮膚テスト、血清特異的IgE抗体検査を組み合わせて診断します。
また、鼻汁の好酸球検査が陽性、あるいは誘発テストが陽性であれば、ダニアレルギーと確定されます。
ダニアレルゲンは秋に増える
ダニの種類は多く高い室温と湿度の夏に繁殖します。増えたダニが死滅した秋に乾燥して室内をただよっています。よって、秋にアレルギー症状がひどくなる傾向です。
冬でもアレルゲンがなくなるわけではないので、ダニアレルゲン対策は年間を通して必要になります。
ダニアレルギーの舌下免疫療法が保険適用
鳥居薬品の「治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」」は、海外では発売されていましたが、日本では認可されて発売されたのは2015年4月21日です。
「治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」」は、アレルギーの症状や程度によって薬剤の濃度の調整をしなければならず、また、治療開始後も患者さんの状態を問診した上で投与量を決定するわずらわしさがあり、処方できる医師はアレルギー治療に精通した医師に限られるという欠点があります。
しかし「治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」」アレルギー性鼻炎と気管支ぜんそくに対して適応があり、以下に説明する「アシテアダニ舌下錠」にはないメリットを持っています。
シオノギ製薬は2015年3月26日に「アシテア ダニ舌下錠」の薬名で5月20日に薬価収載され発売されました。
その後2015年11月に鳥居薬品の「ミティキュア ダニ舌下錠」も薬価収載されて発売されています。
「アシテア ダニ舌下錠」は、用法用量は成人および12歳以上の小児に対し、1回100単位を1日1回の投与から開始して3日間かけて1回投与量を100単位ずつ300単位まで増量する処方になっています。
鳥居薬品とシオノギ製薬は、ダニの舌下免疫治療薬を海外の製薬会社から輸入しています。
どちらの舌下治療薬もヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニが50%ずつ含まれていますが、シオノギ製薬の「アシテアダニ舌下錠」には「トリイ」よりも約5.7倍多くダニが含まれています。
この2つの治療薬の優劣は一概に言えませんが、医療機関によってどちらの治療薬を使用するか決められます。副作用の度合いも違いがあります。
健康保険が適用になる方
1.最低でも治療を2年間継続する意思があり可能な方
2.満12歳以上でダニアレルゲンが陽性の方
治療ができない方
1.現在スギ花粉症舌下免疫療法を行っている方
2.満12歳未満のお子様
3.重い心臓病疾患の方
4.がんの治療中、又は経過観中の方
5.重篤な気管支喘息の方
6.妊娠をされている方、近いうちに妊娠を計画されている方
まずは、医師にご相談ください。
治療方法と通院
舌の下に舌下錠を置いて約1から2分間維持した後飲み込みます。飲み込んだ後は5分間はうがいも飲食も禁止です。上記を忘れずに毎日欠かさず行う必要があります。
欠かした場合には、期待される効果が得られないばかりか、安全上の問題が生じる場合もあります。
通院回数は、新薬ですので発売後1年間は薬の処方が2週間まで、1年を過ぎると1か月に1度の通院となります。
鳥居薬品の「ミティキュア ダニ舌下錠」の処方の場合
アレルギー検査や問診で治療ができる方は、医師の指導管理のもとで治療を進めていきます。
初回は、医師の監督のもとで低濃度の舌下錠を服用し30分ほどアレルギー症状等の異常が起こらないか経過観察をします。副作用は服用後30分程度でみられるからです。
異常なければ、家庭で1週間毎日1回飲み続けます。家庭での服用中に異常を感じた場合は、医師に相談しましょう。
1週目の服用状況を医師が確認をします。異常がないれば2週目のステップに移ります。
2週目は、高濃度の舌下錠になります。1週間の状況をみたうえで異常がなければ、2週間分が処方され、しばらくは2週間に1度通院をして薬を処方してもらいます。
治療期間
個人差がありますが、効果があるか否かは最低でも1年から2年かかります。効果がある場合は引き続き治療を行う必要があり最長で5年程度かかることもあります。
途中で治療をやめると、効果が期待できないばかりか、最初からやり直しとなりますので、根気よく続けることが大切です。
治療費用
健康保険が適用となりましたので、国保の場合は3割負担となります。
初診の時は、アレルギー検査がありますので5,000円前後です。
その後の1年間は、2週間に1度通院して頂きますので、治療費と薬局での薬代と合わせて1ヵ月あたり3,000円程度です。
副作用等があった場合は、別途費用がかかることもあります。
副作用
初回は、副作用が起きても迅速に対応出来るように医師の管理下で服用することが前提となっています。2回目の問診では、初回の服用後の体の状態や家庭での服用後の副作用などを聞かれます。
多い副作用として、口腔や舌、唇、のどのかゆみや腫れなどで、腹痛や下痢、嘔吐などの症状も起こることがあります。
まれに重度の副作用として、全身性の副作用のアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。
2015年にダニアレルギーの舌下治療が保険適用となり、1年中ダニアレルギーの症状で苦しんでいる患者に朗報となりました。
ダニアレルギーを根本から改善して完治が期待される治療で患者にとって大きな救いとなります。
スギ花粉症舌下免疫療法に続いて2件目なり、ヨーロッパでは既に治療法として確立されていますが、日本でも様々なアレルギー疾患の治療法として免疫療法が普及することが期待されます。
ヒノキの舌下免疫療法の新薬開発も近い
スギ花粉に対する鳥居薬品の舌下免疫療法薬「シダトレン」の製造販売が承認されました。
この治療は、アレルゲンがスギ花粉の花粉症患者のみが対象となります。
よって、この新薬をヒノキをはじめ、秋の花粉症のブタクサやヨモギに応用することは出来ません。
スギ花粉症の患者が花粉症全体の約8割の2400万人という分布事情もあり、スギ花粉の新薬開発が最優先されたという訳です。
しかし、残りの2割、600万人はスギ花粉症以外の花粉症という事になります。
スギ花粉症の患者の中には複数のアレルゲンを保持している方もいますので、患者数はもう少し多いと推測されます。
花粉症植物のアレルゲンは60種類以上もあるとされていますので、それぞれにのアレルゲンに対して花粉症患者がいることになります。
今回、スギ花粉症の新薬が開発された背景には、注射による免疫療法は多くのデメリットがあり、普及しなかった事と、更に増え続ける花粉症患者に医師達は強い懸念と焦りを感じていました。
そして、医師主導で始まった舌下免疫療法薬の研究開発は鳥居薬品株式会社を巻き込んで完成しました。
免疫療法の作用機序には、共通点があり、今回の承認を得たスギ花粉の舌下免疫療法薬を皮切りに日本でも一気に免疫療法が進む可能性が高まりました。
ヒノキ花粉症を始め、秋の花粉症のアレルゲンの雑草などの花粉症に対する舌下免疫療法薬の新薬開発も近いと思われます。
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