免疫療法関連情報

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花粉症などのアレルギー疾患は衛生仮説で説明可能

 

衛生仮説をご存知でしょうか。
 
1989年にイギリスのストラッチャン博士によって提唱されたもので、「清潔にしすぎると、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が増える」というものです。
 
実際に、発展途上国よりも先進国の方が、農村部よりも都市部の方が、アレルギー罹患率が高いのです。
 
また、幼い頃に家畜やペットと触れ合うと将来アレルギー疾患を発症する確率が低くなることが明らかになっています。
 
この調査結果から、生活環境因子とアレルギー疾患とが密接に関わっていることを示しています。
 
清潔にしすぎるとアレルギー疾患を招くとする衛生仮説が科学的に証明されつつあります。

 

 

旧西ドイツと東ドイツの例

 
もう一つ、ヨーロッパで行われた疫学研究をご紹介します。
 
ドイツは、西と東に分断されていましたが、旧西ドイツは旧東ドイツに比べて花粉症などのアレルギー疾患が有意に多いことが報告されています。
 
旧東ドイツの方が、衛生環境が悪く寄生虫感染が原因とみられる抗体保有の値が高かったとの報告があります。
 
このことは、後ほど説明するヘルパーT細胞のTh1とTh2の相互抑制作用の働きから説明がつきます。
 

 

アレルギー疾患のしくみ

 

アレルギー疾患とは、体内でアレルゲン(花粉やダニ、ハウスダストなどの抗原のこと)に反応し、ヘルパーT細胞のサイトカインを通して指令を出して、B細胞が作る抗体の一種であるIgEが気管や消化管にあるマスト細胞の受容体に結合します。
次にマスト細胞とアレルゲンとが結合してヒスタミンなどのアレルギー反応物質が分泌されて起こる免疫反応の一つです。
 

Th1が活発であればアレルギーのTh2は抑制

 

ヘルパーT細胞にはTh1とTh2の2種類が存在していますが、この2種類はお互いに抑制的な関係にあります。つまり、一方の働きが強くなると片方の働きが弱くなります。
 
そして、この2種には守備範囲があり、Th1は主として細菌感染症に対応するサイトカインを産出し、Th2は主にアレルゲンに対応するサイトカインを産出します。
 
Th1とTh2はお互いに抑制的な関係にあると述べましたが、細菌感染症に罹患するとTh1が活発に活動するため、Th2の守備範囲であるアレルギーの発症は抑えられることになります。

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