舌下免疫療法の知識

 このエントリーをはてなブックマークに追加 

舌下免疫療法の副作用

 

 根治が期待される舌下免疫療法の治療は、医師の指導のもとで治療計画を立て患者が自宅などで主導的に進めます。
 
 そこで、気になるのが治療による副作用です。
 
 舌下免疫療法薬のシダトレンが厚生労働省の承認を取得されるまでには、臨床研究といって、一定期間特定の患者に試験的に治療を施して、副作用等の安全性をチェックします。
 
 この臨床研究の期間で報告されている主な副作用は、口腔の腫れと痒みの症状です。
 
 この副作用については、治療開始当初に出ることが多く、免疫を慣らしていく過程ではある程度みられる症状のようです。
 
 症状が長く継続しない限りは治療の継続に影響するものではないようです。
 
 症状が長く続いたり症状が強い時は、すぐに担当医に相談しましょう。
 
 舌下免疫療法の一つ前の治療法の注射による免疫療法では、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用の報告もあります。
 
 舌下免疫療法では、臨床研究期間中には、重篤な副作用は報告されていないようですが、今後出ないとも限りませんので、治療は慎重に進めるべきです

 

 

WHO(世界保健機関)も安全と認める免疫療法

 
アレルギー疾患の治療法である免疫療法は、ヨーロッパ諸国では、普及し浸透しています。
特にイギリスでは免疫療法としては一般的にに行われています。
 
また、WHO(世界保健機関)は、免疫療法を安全で完治が望める唯一のアレルギー治療と認めています。
 

注射による減感作療法は副作用が強かった

 
これまで、日本で行われてきた健康保健適用外の花粉症免疫療法は、減感作療法と言って、アレルゲンを注射により体内に入れて慣れさせる治療法ですが、注射をした後に強い副作用が出ることもありました。

 

臨床研究では殆ど副作用は発生していません

 
スギ花粉症治療薬の舌下免疫療法は、長期間にわたる臨床研究で、被験者の数パーセントに口腔内にかゆみ等の違和感が生じた程度でアナフィラキー症候群などの発症例はありませんでした。
 
注射による減感作療法は、体調が良くない時は治療が出来きませんが、舌下免疫療法では風邪で発熱があっても治療を継続できます。この点からも安全性が高い治療法であることが裏付けられています。
 

花粉が飛散する時期をターゲットにした短期間の治療も可能

 
また減感作療法は、治療期間中に一度でも治療を休むと、最初からやり直さなければならない煩わしさがありましたが、舌下免疫療法では、花粉症のシーズンを除けば、任意の時期に治療を初められ、途中で止めることもできます。
 
例えば、毎年の花粉症シーズン3ヶ月前に治療を初め、花粉の飛散終焉後に治療を止める事も可能です。このサイクルを毎年繰り返し行う事もできます。
 
臨床研究では、この様な治療期間でも十分な改善効果と安全性が確認されています。

 

 

治療開始前の問診とアレルギー検査

 

シダトレン舌下免疫療法の治療を希望する時は、まず医師の問診を受けた後、アレルギー検査を受けなければなりません。
 
重度のアレルギー症状がある人や喘息患者は、治療が適さない場合もあります。
 
スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉がアレルゲンの花粉症患者が治療の対象になります。
 
花粉症のアレルゲンは、スギ花粉が断トツに多いのですが、ヒノキやヨモギ、ブタクサなど60種類以上もあるとされています。
 
スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉がアレルゲンとなって花粉症の症状が出ている人が対象となりますので、検査によりスギ花粉症であることを判別しなければなりません。

 

問診と検査

 

まず、問診を受ける事になりますが、問診では医師から花粉症の症状が出たときの状況などを細かく聞かれます。
 
主な質問項目としては以下の通りです
 
◎鼻水や鼻づまり、目の痒みなど症状の種類とそれぞれの強さ
 
◎天気や気温、季節や時間帯などの条件下で症状に違いがあるかどうか
 
◎最初に花粉症の症状が出た時期
 
◎過去に受けたアレルギー検査と結果
 
◎過去に処方された薬、市販の薬
 
◎他のアレルギー疾患があるか
 
◎家族にアレルギー患者がいるか
 
◎犬や猫、鳥などを飼っていないか
 
などです。
 
20項目以上の問診シートを用意している病院もあります。
 
初診の時には、事前に自分の花粉症の症状を出来る限り詳しくメモにしておくと問診や治療の参考になります。

 

視診

 

鼻腔壁の粘膜を目視により調べる検査です。
 
粘膜が赤く腫れている場合は花粉症アレルギーの可能性が高く、ハウスダストやダニのアレルギーは白っぽい色になる場合が多いのです。

 

 

血液検査

 

血液検査では様々な事がわかります。
 
一回の血液検査で十数種類以上のアレルゲンやアレルギーの強さなども調べることが出来ます。
 
血中に含まれる好酸球、IGE、花粉に反応するIGEの量を調べます。
 
血中の好酸球はアレルギー症状が出ている時に増加する白血球の一種で、その数でアレルギー反応の強さが判定されます。
 
より精度が高く広範な検査法としてRAST検査法が活用されています。
 
この検査では、アレルゲンの特定とその影響度を判定できるため、とても有効な検査法です。

 

 

シダトレン「舌下免疫療法」の効果が高い人低い人

 

ヨーロッパでは全てのアレルギー疾患に免疫療法が適用

 

舌下免疫療法は、ヨーロッパでは既にアレルギー治療として広く普及しています。
 
花粉だけではなく、ダニやハウスダストなど、アレルギーを引き起こす原因になる物質のシロップを舌に垂らす方法で治療しています。
 
イギリスでは、アレルギーの治療には免疫療法が常識になっております。
 

乳幼児から年齢とともに、様々なアレルギー疾患になるアレルギーマーチ

 

日本では、花粉症を初めとしたアレルギー患者は増加の一途をたどっており、年齢が低くなるほど患者数が多くなる傾向にあります。
 
また、近年のアレルギー患者の特徴は、乳幼児の時にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーになり、その後小学生くらいで喘息となり、更にアトピー性鼻炎と次々に様々なアレルギー疾患にかかることからアレルギーマーチと呼ばれています。

 

アレルギー疾患がスギ花粉症だけの人は治療効果が高い

 

30歳代までの花粉症患者は複数のアレルギー疾患を持っている方が多く、スギ花粉症が完治しても、通年性のダニアレルギーなどの他のアレルギー疾患がある場合、スギ花粉症が完治しても、他のアレルギー症状は残りますので、アレルギー症状と決別することは出来ません。

 

 

複数のアレルギーがある方は注射による皮下免疫療法

 
健康保険の適用が決まった舌下免疫療法は、アレルゲンがスギ花粉症の方が対象となります。
 
スギ花粉症は、季節性のアレルギー疾患ですが、一年中、症状が出るアレルゲンもあります。
 
これを、通年性のアレルギー疾患といい、代表的なものにダニやシックスハウスがあります。
 
スギ花粉症だけではなく、複数のアレルギー疾患がある場合、どうしたら良いのでしょう。
 
例え、スギの花粉症が完治したとしても、通年性のアレルギー疾患は治る訳ではありません。
 
複数のアレルギー疾患を持っている方は、複数の疾患を同時に治療出来る注射による皮下免疫療法が適しているかもしれません。

 

現在、塩野義薬品株式会社と鳥居薬品株式会社がダニの舌下免疫療法薬を開発中ですが、まだ少し先になそうです。
 
薬の種類が増えれば、治療の選択肢も広がります。
 
最近、花粉症を発症する前に、舌下免疫療法をすることで発症を未然に防ぐための研究なされ、効果があることが分かっています。
 
花粉症の患者が急増していることを考慮すると、有意義な試みと云えます。

 このエントリーをはてなブックマークに追加 
 

関連ページ

シダトレン「舌下免疫療法薬」治療前のアレルギー検査
花粉症の新薬舌下免疫療法薬「シダトレン」の治療を受ける前アレルギー検査をします。アレルギー検査は血液検査や粘膜検査です。
シダトレン「舌下免疫療法」の効果が高い人低い人
花粉症の新薬舌下免疫療法薬「シダトレン」には治療効果の効果が高い人と低い人がいます。専門医の診断を受けるときに花粉症の症状を詳しく伝えましょう。
複数のアレルギー疾患を持っいる方の治療法
複数のアレルギー疾患を持っいる方はそのアレルギーごとの治療が必要です。花粉症の舌下免疫療法で他のアレルギーは治りません
舌下免疫療法治療前のポイント|ヒノキやブタクサへの効果は?
スギ花粉が飛散している時期に舌下免疫療法の治療を開始することは出来ません。ヒノキやブタクサなどの他の花粉症にも効果があるのでしょうか。治療前のポイントです
スギ花粉症「舌下免疫療法」の治療費用
花粉症の新薬舌下免疫療法薬「シダトレン」が厚生労働省の製造販売承認を受け健康保険の適用されることになりました。大よその治療費用を調べておきましょう
舌下免疫療法の治療が出来る病院の探し方
花粉症の新薬舌下免疫療法薬「シダトレン」が厚生労働省の製造販売承認を受け健康保険の適用されることになりました。病院の探し方を調べましょう
舌下免疫療法は、ヒノキやブタクサの効果は?
花粉症の新薬舌下免疫療法薬「シダトレン」が厚生労働省の製造販売承認を受け健康保険の適用されることになりました。舌下免疫療法は、ヒノキやブタクサなど他の花粉症の効果
スギ花粉症「舌下免疫療法」の副作用について
治療前に舌下免疫療法「シダトレン」の副作用を知っておきましょう。これまでの注射による治療中では急性のアレルギーは報告されています